スタジアムの外は勝利の歓喜に沸くヨルダン人でごったがえしていた。
国旗を振り回し、テンションの高いサポーターたちが、急ぎ足で帰途に就く僕らについてくる。
ゲートを出てからタクシー運転手との待ち合わせ場所まで、たったの200メートルだったが、青いユニフォームを着た日本人の集団は
やはり目立つのだろう。ものの数十秒で、僕らの周りには100人以上のヨルダン人が群がってきた。何となく嫌な予感がよぎる。
暗い夜道の中、手を振るタクシー運転手を何とか発見。安堵の溜め息をついたのも束の間、ヨルダン人の群衆が奇声をあげながら
僕らのグループに一気に身を寄せてきた。場の空気が一瞬凍り、連れの女性たちが悲鳴を上げた。
お尻を触られるなどの痴漢被害を受けたようだ。
女性に近寄ってきたヨルダン人を僕ら男性陣が押し退ける。ヨルダン人の運転手も、取り囲んできた若者たちにアラビア語で何やら叫んで、
威嚇する。生命の危険を感じるほど、一触即発の雰囲気となった。
そんな緊迫した空気の中、運転手と英語で会話すると、タクシーがちょっと離れたところに駐車しているとのこと。
ではそのタクシーの場所まで急ごうと話し、移動を始めようとした時、事件は起きた。
「携帯! 携帯盗られた!」
仲間の女性が叫んだ。その叫び声に瞬時に反応し周りを見渡すも、暗い夜道に溢れ返る人混みがそこには存在するだけ。
完全に犯人を取り逃がした。その女性に聞いてみると、突然上から手が伸びてきて、手に持っていた携帯を力づくで持っていかれたらしい。
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